わたしは光をにぎっている

自分は光をにぎつてゐる/山村暮鳥

自分は光をにぎつてゐる
いまもいまとてにぎつてゐる
而もをりをりは考へる
此の掌をあけてみたら
からつぽではあるまいか
からつぽであつたらどうしよう
けれど自分はにぎつてゐる
いよいよしつかり握るのだ
あんな烈しい暴風の中で
摑んだひかりだ
はなすものか
どんなことがあつても
おゝ石になれ、拳
此の生きのくるしみ
くるしければくるしいほど
自分は光をにぎりしめる

  • -

公開前から予告編を見てかなりいい作品に違いないと目をつけていた中川龍太郎監督の最新作を、京都シネマでの公開初日に観に行った。

地方から上京し、亡くなった父の古い友人が経営する銭湯で生活を始めた二十歳の主人公が、様々な経験をしながら自立していく姿がシンプルにコンパクトに描かれている。

言葉が持つ強さと、映像が持つ強さをよく理解して映画を作っている監督なんだなという感想。タイトルのとおり、光の描写が要所要所で決まっている。わたしは光というものに心底惹かれているので、ドローンで空撮した海の輝きや、窓に差し込む夕方の陽や、入れたてのお湯の美しさに何度もハッとさせられた。

松本穂香の演技を初めて観たんだけど、アライグマみたいな可愛い顔の表情が絶妙でとても良かったです。当て書きだったらしいけど、口数の少ない役で、だからこその表情や目線の運び方がとても上手だった。

あとはなんといっても光石研!この映画、光石研の演技だけで100点つけられる。本当に上手い役者。表情が読めず何考えてるかわかんないおじさんの役が本当うまいな!!酔い潰れてゲロ吐くシーンとか、演技だと思えない。あとラストシーン!!あの表情は天才だよ!!心の中で何回「天才!」って叫んだかわかんないよ!!光石研平田満はおじさん界の一番星だよ!!!

光石研の功績により、今年の邦画ナンバーワンに決定!