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約5年住んだ家を引越した。綺麗で、家賃もほどほどで、ウォッシュレットとオートロックが付いていて、蛇口の水切れが悪い家。南向きの大きな窓越しにたっぷりの日差しが入ってきて、夏はアリの大群がクーラー経由で室内に入ってくる家。職場まで10分で行けて、近くに仲良しの先輩が住んでいて、帰り道の坂がキツい家。

5年の間にいろんな恋をして、恋をした人たちとこの家でごはんを食べたり、映画を観たり、踊ったり、イチャイチャしたり、喧嘩したり、真剣な話をしたりした。仕事で大変な時期には、家にいる時間は短かったけれど、いつも一日の始まりはこの家のこの景色で、一日の終わりはこの家のこの景色で終わった。辛くて悲しいことがあった日にこの部屋で泣いて、嬉しいことがあった日はこの部屋で喜んだ。うるさくしすぎて階下の住人からお怒りのお手紙をもらったり、サッカーの日本代表戦がある度に隣の部屋の大学生とその友人たちの声が聞こえてきたり、同じように隣に聞こえているんだろうなと思いながら夜中に一人でカラオケしたりした。

掃除が苦手で、大抵汚かったけど、この部屋が好きだった。住めば都と言うが、本当に都だったな。ふと思うと、わたしは今まで住んだ部屋、全部好きだった。不便なところもたくさんあったのに、不思議だな。

そうして、新しい家に引越した。新居に移って3日経ったが、部屋が広くなって端から端までの距離感ができたことで、たまに伽藍堂のスペースを見つめて寂しくなったりする。でもこんな気持ちもすぐに忘れて慣れてしまうんだろう。そして地域柄、多国籍の人が多いので、隣人は恐らく中国の男の子である。夜になると誰かと電話で喋っているのか、怒っている声が聞こえてくる。とにかく声がでかい。それを聞いて「大変そうだな」と思いながら、わたしはひとりで新しい部屋に自分の存在を馴染ませていっている最中である。

洗濯機が室外で、ウォッシュレットとオートロックは無くなったが部屋が広くなった。広いのはやはり素晴らしいことです。そして引越しに合わせて買ったソファが最高。早くテレビ買って映画三昧したい。あとなぜか一枚だけ部屋の壁が青い。前の家よりも街中に近づいたので、散策するのが楽しみ。今日は北へ歩いて、街路樹が続く道を散歩したのが楽しかった。親友の家にも近くなったので嬉しい。